不幸の避け方~ラブトレイン~
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久々にアウトライナー方式を使って思索してみる
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本日の議題: 不幸の回避方法~ラブトレイン~
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生きていれば必ず不快な思いをしたり、ストレスを感じる出来事と出会う
- この時に行う対処をcoping mechanismと言う
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最強のcoping mechanismとは何か?
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論文を見ていく前にempiricalな仮説を立てる
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答え: Beat it
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問題からは出来る限りずらかる。響きが気に入らないなら「立ち向かう必要性のない問題からは」と付け加えても良い
- 事実として、立ち向かうべき問題には立ち向かう/立ち向かう必要性のない問題からは逃げる、が理想ではあるのだけど、ここの判定機が正確な人間ってほとんどいないので「迷ったら撃つな」如く「迷ったら逃げろ」でいいと思う
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立ち向かう必要性のない問題の例: 電車内での他人の騒音
- 「あの!やめてくれませんか!」と叫んで他人を変えようとするより車両を変えた方が早いし確実
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Beat itとは、「他人ではなく自分の環境を変える」ということ
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その場をずらかる、というのは他者ではなく自己の環境を変える最もシンプルなやり方
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論文を見ていく
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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9680997/ によるとavoidantなcoping mechanismに頼る人ほどneuroticismが高くストレスに曝されやすいらしい。逆もまた然りとか
- avoidantなcoping mechanismに「否定や愚痴」とある。これはThe American Institute of Stressの主張(planning, substance use, denial, and venting actually cause more harm than good)と一致する
- 一方でhttps://openaccesspub.org/ijpr/article/999によれば感情を抑圧することは精神的健康を阻害するとある。無理やりこじつけるなら感情の抑圧はdenialに値するから、ということになるが、venting(感情を吐き出すこと)がダメなのに感情を抑圧するなとはどういうことなのか?
- avoidantなcoping mechanismに「否定や愚痴」とある。これはThe American Institute of Stressの主張(planning, substance use, denial, and venting actually cause more harm than good)と一致する
一旦アウトライナー停止。この問題は解決する必要がある。
まず「感情を抑圧するな」と謳う方の論文の結論を見てみる。
結論として、自分の本当の感情や気持ちを表現することは、身体的健康、精神的健康、そして一般的な幸福にとって極めて重要である。家族や信頼できる友人に打ち明けることが最良の選択肢のように思えるが、それだけではない。心理療法士やカウンセラーに相談するのも、助けを得る方法のひとつだ。
あるいは、自分の本当の気持ちや感情を書き留めたり、自分の人生で最も動揺し感情的に苦痛を感じた出来事をテープに記録したりする方法もある。これらの実践は、感情を管理・調整する上で有益な効果があることが研究によりわかっている。
避けようとしていたことに直面することで、短期的には苦痛や感情的興奮の感覚が高まるが、情緒の安定、心身の健康、さらには自分自身や他者に対するより広い理解を得ることで、その恩恵ははるかに大きくなる。
最も重要なのは、長期的なメリットは、このプロセスに感情的に関わろうとする人にのみもたらされるということだ。自分の気持ちを誰かに話してもらうというのは、感情的な安定を得る上ではあまり助けにならない。
う~ん……なんか論文にしては筆者の主観がだいぶ入ってるような……。
evidence basedで考えるなら「自分の本当の気持ちや感情を書き留めたり、自分の人生で最も動揺し感情的に苦痛を感じた出来事をテープに記録したりする」ことがストレスを減少させ長期的効用をもたらすというバックアップが欲しい。
https://www.semanticscholar.org/paper/Stress-and-Anxiety-Reduction-Due-to-Writing-E-mail%2C-Murnahan/16c191992904ec61e479675cd9c336fc3a71979aによると、日記やブログのようなwritingは「長期的にはプラスに働くが、短期的にはプラスにもマイナスにも働くことが示されている」らしい。では感情を吐き出すためだけのwritingはサイコロを転がすようなものなのでは?
しかしhttps://www.canr.msu.edu/news/journaling_to_reduce_stressに示される論文群など、データ量でいえば「本当の感情を書き出すこと」が長期的にポジティブな効用をもたらすのは、少なくともその反証よりは確からしい。
では冒頭に戻り最初の2つの論文との接触について考える。最初に問うべきは、定義された「自分の本当の気持ちや感情を書き留めたり、自分の人生で最も動揺し感情的に苦痛を感じた出来事をテープに記録したりする」行為がventingとみなされるか否か。答えは、少なくともchatGPTの見解ではYES。
となると、以下は嘘または不正確ということになる。
Not all coping strategies are associated with enhanced psychological resilience, however. The researchers report that planning, substance use, denial, and venting actually cause more harm than good. They also report that self-distraction and humor neither induced a positive nor negative change in people’s mental health during the pandemic.
あるいはventingをさらに分類分けして、健康的なventingと不健康なventingがあると宣うものもある。https://news.umiamihealth.org/en/venting-is-it-helpful-or-harmful/ではchronicなventingを悪と定義している。
ここまでの情報をまとめると、「対人でのventingは条件によっては健康を害す可能性があるが、誰にも見せないノートに書き留める分にはよい」くらいしか仮説を立てられないな。
“Venting may reduce your stress, anger, confusion, or frustration. That can be beneficial,” he says. “Venting that heightens these emotions is not.”
↑セルフサービスすぎる。その定義をするのがお前らの仕事ちゃうんか。
ventingを「健康的なventing(written in a private note, not chronic)」「不健康なventing(chronic, persistent, spoken to others)」と分けることで矛盾は解消されるように見えるが、どう考えたもこの二つの境界は曖昧で、物は言いようという事になってしまう。
しかし护士を対象とした論文の方では、少なくともventingは不健康な方のものと定義していそう。対義として比較されている「problem-focused coping」が「all the active efforts to manage stressful situations and alter a troubled person-environment relationship to modify or eliminate the sources of stress via individual behavior」とあるので、最初に例に出した車両を移動する行為はavoidantではなくproblem-focused(≒approach)ということになる。
語義が曖昧すぎてわからん。論文は被験者が行ったcoping mechanismの具体的な実例を示してくれ、全部。
- 「コントロール不可能なストレスに対処するための最も効果的な戦略は、ストレス因子を変えようとするのではなく、ストレス因子に適応することであることが何度も分かっています」 https://news.vanderbilt.edu/2017/07/20/new-research-identifies-best-coping-strategies-for-kids/
- 先の仮説と一致
- 最強というのを効果量ではなく一番低リスクで汎用的という定義にするなら、religion(宗教)が最強らしい
- 余談だが、キリスト教とイスラム教ではキリスト教徒の方がless depressiveであることが複数の研究で分かっている。 https://www.mdpi.com/2077-1444/11/10/498
- 因果関係ではなく相関関係ではないかとも思うが……christianismが支配的な国の方が発展度が高そうだし
[!note] Authors node
上記説明は誤りです。原文は「Among the Muslim cohort, positive religious coping was inversely related to depressive symptoms and having a history of psychological disorders. 」なので、
「イスラム教徒の場合、宗教的な対処法がより高いほど、うつ病の症状や過去に精神疾患の経験があったことが少ないという関連性が確認されました。一方、キリスト教徒の場合、宗教的な対処法とメンタルヘルスの間に明確な関連性はみられませんでした。」
が正解になります。
まあ、とにかくあれです。感情を抑圧するのは良くなくて、吐き出すことは必要だけど、目的は開放であって他人にぶつけるのではないことを意識しましょう、というのと、サっと済ませましょうということらしい。研究によれば長引いた愚痴はとりわけ良くないとある。これは永田さんの「キレを宵越すな」とも一致する。どっちかというとここが本質な気がしてきたな。感情を抑圧するということは、ネガティヴな感情が長く自分の中に滞在するということです。どんなやり方でもいいから彼等の滞在時間を短くしろということなのでは。
しかし日記を書くことが精神衛生に良いというのは正直納得できないな。13年書いてきたからこそ言えるが。明るさの塊みたいな人間で日記書いてる奴見たこと無いよ。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33649444/の研究によるとanxietyは下がるがdepressionには効果がないとある。
depressionとanxietyの違いとは何か?
GPT4によると以下のとおり。

depressionは海馬(記憶や学習)、anxietyは扁桃体(情動反応や恐怖処理)に関連するらしい。最も大きな違いは「恐怖」ということになる。anxietyは未来への恐怖を煽る。depressionは?どうも掴みにくい。感覚として今depressionを感じているか、anxietyを感じているかという違いが分からない。
パニック障害はanxietyに分類され、希死念慮はdepressionに分類される……はず。多分。
実例で考えると、たとえば「最近眠れない。今夜も眠れなかったらどうしよう」はanxietyに分類される。「寝ることもろくにできないなんて、己はだめな人間だ。死んだほうがましだ」はdepressionに分類される。
色々な研究を見ると、「anxietyには効くがdepressionには効かない」という例は結構多い。一見すると悲観的な結果に見えるが、よく考えるとanxietyの方がタチが悪いので此奴を緩和できるなら御の字だろう。ストレスを生むのは主にanxietyであり、謂わばこいつがキックスターターになっている気がする。
もうひとつ見つけたかも、depressionとanxietyの違い。depressionはね、たまに気持ちいいんですよ。anxietyはまかり間違っても気持ちよくはならない。これだ。一番わかり易い。depressionに自己破壊的に陶酔することはあってもanxietyはマジでさっさと去れという感じでしょう。
depressionの視覚化として最もわかりやすいのが”depression fucks me hard while i do nothing about it”という動画だと思う。
パラメータでいえばanxietyは攻撃力が高いがHPが低く、depressionは攻撃力は低いがHPが高いみたいな厄介さがある気がする。うむ、だいぶ固まってきた。
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