俺が悪役でじじいがヒーローか
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いぬやしき、履修完了。
評価が分かれそうな作品ではあったけど、個人的にメチャクチャ面白かった。粗がなかったわけではないが、キャラクターの造形がとにかくメチャクチャうまい。造形って見た目じゃなくて内面ね。
個人的にメチャクチャシシガミに共感してしまったのだけど、レビューを見るとそういう見方するアニメじゃないのか。いや、少なくとも作者側はそういう見方も想定してる気がするんですけどね、俺の印象だと。ダブル主人公でしょこれ。
シシガミはサイコパスだサイコパスだって言われてるけど、指を切って人間に戻る夢を見て心から喜んだり、親友に心がない化物と言われて本気で傷ついたり、そういう人間らしさを持ち合わせているからこそ魅力的に感じた。ていうか、吉良吉影のときも思ったけど、みんな「殺人の動機」を屈折して考えすぎているよ。シシガミの殺人を「理由もなく大量に罪のない人を殺した」と言っている人がいたけど、「理由もなく」ではないでしょ。「人を殺すことでしか生きている実感を得られない」からですよ。殺したいから殺す、のではなく、殺さざるを得ないから殺すんですよ、こういう人らは。キラは「人を殺さずにはいられないという性(さが)」と表現していたけど、それを「人を殺すのが好きで、快楽のために自分の意志で殺し回っている」というふうに捉える人らとは少しわかりあえない。「性」って、呪いですよ。キラにしてもシシガミにしても、殺さずに”生きて”いられるのならよほどそっちの方が良いと心から願っているだろう。獅子神皓は殺人を「光」と称していたけど、彼らシリアルキラーは「その光に賭けるしかなかった」人々で、ある意味では遺伝子のバグの犠牲者といえる。
なんにしてもいぬやしきはシシガミの扱いがものすごくうまくて、作中では徹底して彼の思想ややっていることが肯定されることは無い。エゴイスティックで共感性の低いシリアルキラー。それでも、シシガミというキャラクターなりの正義があり、矜持があり、人生がある、というのを完璧に描けていたと思う。「あんたは俺と同じだ。勘違いするな。俺もお前も自分のことしか考えてないんだよ」と彼に言わせたのは、「○○することでしか生きられない」という性の共通を表していて、犬屋敷はそれがたまたま「人を救うこと」だったけど、シシガミも又たまたま「人を殺すこと」であったというだけ、ということなんですよ。この作品はキャラクターが良く泣くけど、獅子神が泣く時は他のキャラのそれよりもなんだか真に迫って感じた。ていうか声優がうまい。聞けば素人らしいが、「チョッコーが一番の強敵か……笑える」の所とかすごくうまかった。感情の表現がよ。
あと10話の犬屋敷VS獅子神、最終的に二人の戦いではなく二人の意識を置き去りにした機械同士の闘争になったのもすごく良かった。Iconoclastsのラスボス戦みたいな言い表しようのないトラジェディがある。どうしようもなく虚しい。
語りたいこといっぱいあるけど、とりあえず今年観たアニメだと一番良かったと思う。作品のクオリアとしてはファイアパンチみたいなどっちかというと俺の嫌いな邪道エログロゴリ押しくんな気もするんだけど、何故かこっちは素直に受け入れられたな……「後先考えてない」タイプの作者ではない(なさそう)からかもしれん。
一つ不満があるとしたらマリは死んで良かったんじゃないだろうか。最初に死者蘇生をしたときとまったく同じシチュエーションで、でも今回は生き返らない、現実はそんなに甘くはない……みたいな展開かと思ったら普通に生き返って拍子抜けしてしまった。ファンタジー作品でも無い限り生き返りのPPは1にすべきだと思うよ。ただ生き返らないと獅子神の最期の置き土産みたいになってその後の蠍火がうまく機能しなくなるというのはある。
あとOP・EDも共に素晴らしかったね……。いや~いいアニメに出会えた。あ、本日は以上です。
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