リポーズ

誰彼かまわず人助けできるほど
聖人君子にはなれない
なんて言葉ばかりが跋扈する街で
それでも僕は
悪者探しに精が出るね
他にやることもないしね
虚しさを埋めるには丁度いい
暇つぶしというより人生潰し
崖際足を踏み外した者を
蹴落とし笑って
安心を預金して
何を買うつもりだ 汚れきった手で
昔はよかったな　世界は変わったな
変わったのはあなた自身でしょう
なんて本当のところわかりもしない
押し問答はもう聞き飽きた うんざりだ
刺したいならそういえばいい
友達や家族以外の奴らなんて
どうだっていい　関係がない
なんて言葉ばかりが支配する街で
それでも僕は
不謹慎だ 見せられたもんじゃない
表現思想に自由などない
子どもの気持ちなどわからない
大人たちのための帰りの会
石をわざわざ裏返してまで
見たくもないものを見てしまうのはなぜ?
何を成すつもりだ　くすみきった目で
あなたのためだよ　社会のためだよ
皆の威を借るのはもうやめてよ
なんて何千回言えば気が済むんだ
耳のタコが肥大して鼓膜を塞いだ
寂しいならそういえばいい
すべての人を平等に愛せるほど
今の自分は余裕がない
なんて疲弊ばかりが縛り合う街で
それでも僕は
やらない善よりやる偽善です
情けは人のためにあらずです
咀嚼の仕方が意味を変えた
いつしかそれが戦地を生んだ
わかりあうことなんてできないのは
遺伝子だとか価値観ではなく
ほんの少しの言葉のあやとか
思い違いひとつのせいじゃないか
性善だとか性悪だとか
難しいことはわからないけど
ひとりを轢き殺すことだけが
答えとは思いたくないんだ
誰かのために己が身を削れるほど
献身的にはなれない
なんて当たり前が拡散する街で
それでも僕は