the-only-one-who-can-heal-me-is-myself
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ついに、見つけた……。原作女性で面白い漫画を。「不滅のあなたへ」、全20話を24時間以内に観終わった挙げ句おもしろすぎて原作まで読み始めたんですが、これはすごいよ。すごいよマサルさん。「火の鳥」「レ・ミゼラブル」「ゆびさきミルクティー」の神器に加わり得るレベル。今まで俺は女性には面白い漫画が描けないものとけっこう本気で思っていた。なぜなら女性原作で面白い漫画をマジで一本も知らなかったので。大今良時女史がThe oneか……。あのね、漫画家で二発以上あててる人はマジで強いよ。一発当てるのも難しい世界だから。そして一発当てても後が続かない人が本当に多いから。そういう意味で松井優征なんかも逸材なんですけど……彼は天才というより逸材というか、理詰めの鬼なので感覚ではなく理論で当てるべくして当てているモンスター。奇しくも不滅も鬼滅も女性原作だけど、鬼滅原作履修済みのワタクシからフェアな見解を述べると不滅>>>>>>>>>鬼滅って感じだ。話も面白いし、原作もアニメも絵がものすごくいい。甲乙つけがたいレベルで両方良い。俺はねぇ、不滅のOPがものっっっすごく好きなんですよ。宇多田ヒカルの曲もいいけど、それ以上に映像が良すぎる。こんなに作風を的確に表しながらもワクワクさせる映像はないよね。とても淡々としているのだけど、いくつものまだ先の記憶の欠片がとめどなく流れ込んでくるのがいい。2話からずっと同じ映像なのがすごいよね、20話ぶんほぼ全部見せてるんだもん。背負うものがどんどん増えていくフシの悲痛をうまく描いている。作風としては獣の奏者エリンとちょっと似てるよね。同じNHKということもあり。カイバ、獣の奏者エリン、キノの旅、mononoke、火の鳥あたりを全部ブレンドしたら出来上がるのが不滅。
ピンクブラッドの歌詞に「心の穴を埋める何か 失うことを恐れないわ 自分のことを癒せるのは 自分だけだと気づいたから」という一節があるのだけど、すさまじいよね。話に聞く限りではこの曲は原作を読んでから作った曲ということなので、おそらく作品をイメージして作られているんでしょうけど、あれを読んでこの歌詞を書ける精神力というか感性のするどさ、容赦の無さ。おそらくフシが辿り着くべき最終ラウンドの思想なのだろう。アニメは原作7巻くらいまでしかやってないし、俺もまだそこまでしか読んでないから今後どうなっていくのかはわからないけど、フシが上述のフレーズみたいな心理までたどり着いたら感動してしまうかも。この話何回かしてるんですけど、テラフォーマーズ1巻で、死んだ仲間のカマキリに変態した腕をもぎ取って戦うシーンがすごい好きなんですよね。あの目よ。絶対に諦めないという生への執念。フシという存在は彼が今まで出会った大切な人の無念や怨念で出来ている。彼には未だ「自分」がない。運命に翻弄されるだけの少年だ。そんな彼が「自分」を獲得して、喪失の痛みを「自分」のみで乗り越えられるようになったら……良いよね……そんな感じにならんかな……。覚悟完了したエレンみたいになってほしい。
以下ネタバレあり
不滅のあなたへのすごく良いところは、「不滅」をテーマにしながらも「滅び」もそれに含有されているというか、無限という広大さを描くということは当然同時に有限の尊さを描くことにもなるわけで、物語のテーマとしては実はSランク級に使いやすいんじゃないかと思う。「不滅のあなたへ」が生命に対してとるスタンスとして、物語の節々で、観察者によってあるテーマがステートされている。それはつまり「自分の意志で死ぬこと」の特別性の強調。
人は必ず死ぬ。人の肉体は誕生の瞬間から変化を始め、若々しく活発な時期を過ぎると徐々に活動が鈍くなり最後には停止する。
どう死ぬかが気がかりなのか?ならば考えるだけ無駄だ。その時になるまでわからない。どういった死を迎えるのが望ましかったのか。自分で選ばない限りはな。
つまりこの作品において、「自分で選んだ死」は特別視される。輪るピングドラムの「林檎」とまったく同じ概念がそこにある。生命は「どういった死が望ましかったのか」を知ることはできない。だが、自らの手で選択した死は、それそのものが理想たる死であるとしているわけです。「何かを得るために自分の死期を早めた人間(=自ら死に時を選んだ人間)」を憐れむことは生命に対する侮辱であると、おそらく観察者は言いたいのですよ。見かけによらずアツい男だぜ……。そういう意味では、トナリがハヤセを抱いて死のうとしたのを阻止した場面がちょっと引っかかっていて、助けられた後のトナリの表情、あれは助かったという安堵というより、どうしてという一種の失望のようなものが見えたような気もするんですよね。トナリは「あたしが今、選びたい運命があるとすれば、これだ」といって身を投げたんです。それを止めてしまったわけで……観察者のイズムで言えばあれは理想の死を奪い取った行為にも等しく……いや……わからない。この作品ばっかりは読みきれない。何が正解なのか……俺にもわからない。深い。この作品ッ、「深い」ッ!!ッボボボボボボボボ……
闘技場で「もっとマシなものを手に入れておくべきだった!怖くて強いものを!でなければ意味がない!」というシーンも好き。知らず識らずのうちに、今までの死人を「戦うための道具」程度にしか思っていない深層心理が表面化してしまったんですね。それは視聴者も同じで、そのキャラのパートをやっている時は心を動かされていたはずなのに、終わってしばらくしてみればグーグーは火を出せて便利だ、とか、マーチは子供で使いづらい、とか、unconscious instrumentalizationが行われてしまっているんです。いや~面白い。今んとこ全盛期の進撃くらい面白い。どこへ向かうのか全く読めない作品はやはり面白いね。わからないけど、答えを出さなきゃいけない作品。こういうのは未完結でも読んで追いたくなるもの……。逆にタコピーみたいな「回答の義務」がない作品は完結後に読んだほうが良い。わかりますかねこの感覚……。タコピーの原罪みたいなのは、物語において答えるべき問いを提示してないんですよ。あんなものはどう終わったっていいわけで。ただ進撃とか不滅みたいなのは明確なテーマがそこにあって、それが一貫していれば一貫しているほど作者には最終話での回答の義務がある。結果、進撃は見事に回答をミスったんですけど……不滅はミスらないでくれぇ~~~~~!と祈るだけ。
bilibili、ループ再生のことを「洗脑循环」って言うのおもしろいな。以上。
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