執筆クンフー
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昨日の深夜に暇すぎてiPhoneのメモ帳で思いつくままに書いたやつ
前から思ってたけど、小説書こうと思うとPCよりスマホの方が捗らんか?PCだと画面上に気が散るものが多すぎる
気がつくと、俺は死後の世界らしき場所にいた。あたりを見渡す間もなく、天使らしき女が目の前に現れた。天使らしきというのは、明らかに頭に丸型蛍光灯みたいな円を浮かべているからだ。ただ、天から降りてくるとか、突然瞬間移動で現れたとかではなく、色々な色が混ざり合って不安定にゆらゆらしている地面からにゅっと出てきたが。
「グーテンモルゲン。私は神です。結論から言うと、あなたは死にました」
ずいぶん話が早いなオイ。こちとら驚く暇もないわ。ていうかなんで挨拶がドイツ語なんだよ。色々言ってやりたいことはあったが、あまりに何もかもが突拍子もなさすぎてかえって閉口してしまった。
「あー、えっと、どうも神様。えっと……参考までに、なんで俺が死んだのか聞いてもいいか?」
「昨晩の雨の日、雷にピンポイントで撃たれて死にました」
「そんなギャグ漫画みたいな死に方したの? 俺」
「ええ。抱腹絶倒です」
「笑うなよ、人の死を。ていうか俺どんだけ運悪いんだよ」
「そうでもないですよ? だってあなたはこうして慈悲を授かっているではないですか」
「慈悲?」
「えぇ。普通人間が死んだ後は、前世での行いによって輪廻転生する生き物を決めるのですが……あなたはちょっと、あまりにも不運だったので、特別な転生の仕方をさせてあげます」
憐み半分、嘲笑半分といった笑いを込めてそいつはこちらを見た。バカにしやがって。しかしよく見ると中々可愛いので童貞の俺はすぐに許してしまった。
「そいつはありがたいが、特別な転生とは?」
「あなたに人智を超えた力を授け、ヒトとして再度転生させてあげるのです」
なんと。いわゆる今流行の異世界転生って奴か。俺の場合はトラックで跳ねられたわけではないが、こんな幸運にあずかることもあるのだな。
「あ、異世界転生ではないですよ。転生するのは貴方が生きてきたのと同じ、現世です」
「あ、そうなの……。まぁ、別にいいが。それで? どんなチート能力をくれるんだ?」
俺は少し期待していた。チート能力とともに転生! 何度も聞いたことのある舞台設定だが、いざ自分が対象になると意外に心躍るものだ。俺は死に方をのぞけばとてつもなく不運な前世を送ったというつもりはないが、かといって何不自由ない幸福な人生だったとも言い難いので、やり直す機会がもらえるならそれに越したことはない。
しかし、あいにく俺はそういう転生モノのライトノベルは殆ど読んだ事がないので、どんな能力が授けられるのかはあまり予想がつかなかった。ベタな所で絶対服従とかだろうか。それとも瞬間移動? 時間停止なんかもよさそうだ。
そんな風にひそかに心を躍らせていると、天使はにっこりと笑ってこう告げた。
「あなたの異能は、『自分の身体が絶対に傷つかない』ことです」
なんか、思ってたのと違った。
「絶対に傷つかない? 無敵ってことか?」
「まぁ、それは無敵の定義次第ですが……とにかく貴方の体は傷つきません。ナイフを突き立てられようが、対物ライフルを身に浴びようが、核爆弾を直に落とされようが、まったくもって無傷です」
なるほどな。再生じゃなくて、そもそも傷がつかないのね。そりゃ便利そうだ。
「ただし!」
「ただし?」
「同時にあなたは、『他の人を傷つけることも絶対にできません』」
「……は?」
「できません。殴る蹴るといった自分の体を使うものだけではなく、武器を使っても無理です。銃で誰かを撃とうとしても絶対に撃てません」
「……それは、だいぶ、ゴミ能力じゃないか?」
「何事も使い道です。うえきの法則から学びなさい」
んなこと言われましても。
まいったな。無制限とは行かないだろうとは思っていたが、いくらなんでも制限がキツすぎる。つまり取っ組み合いになれば「負ける」事はなくとも「勝つ」事もあり得ないわけだ。そもそもチートの爽快感ってものがこの能力にはカケラほどもない。無敵の力で敵をばったばったと薙ぎ倒してこその異世界……もとい現世転生なんじゃないのか。
とりあえず俺は、もう少し能力の詳細について聞き出す事にした。
「傷つかないっていうのは、無効化されるってことか? 例えば俺に向けて放たれた銃弾は、『俺に当たるが』俺は傷を負わないのか、そもそも『俺をすり抜ける』のか?」
「前者ですね。あなたに当たりはしますが、ダイヤモンドにでも打ち込んだかのようにびくともしません」
「ノックバックとかは?」
「ありません。スマブラでいえば常時アーマー状態です」
おお。それはだいぶありがたいな。どうもこの力、防御力に関しては本当に最強らしい。だがまだ疑問は残る。
「『傷』っていうのは物理的な傷だけか? 例えば精神攻撃とか、電気ショックとかは?」
「あなたが『自分の体に攻撃されている』と思えば、それは全て弾き返せます。ただし精神攻撃は無効化できません。脳を直接改造とかならガードできますが、『バーカ!』とかの口撃は防げません」
なるほどな。音波攻撃の場合はどうなるんだ、と言いかけたが、おそらく具体的な定義は決まっていないのだろう。どちらかと言うと、俺が「自分の体」をどう定義するかに大きく左右されるようだ。
この手の能力は拘束が怖い。たとえ傷がつかずとも、縛り付けて身動き取れなくしてから錘をつけて海の底にでも捨てればおしまいだ。……ん? 海の底?
「なあ、水中での呼吸はどうなるんだ?」
「基本的には不可能でしょう。体に傷がつかないだけで不死ではありませんからね。あなたが体内の酸素欠乏を『体への攻撃』と本気で捉える事ができれば、あるいは防げるかもしれませんが」
マジかよ。ド弱点じゃねぇか。最もありえそうな死に方が溺死だなんて、洒落になってないぜ。俺は何だか一気に意気消沈してしまった。
「なぁ天使さん。これ……チェンジってわけにはいかねぇかな?」
「いきません。あなたはこの能力を授かると運命づけられていたのです」
「さいですか……」
「なぜ落ち込むのです? こんなにすばらしい力を授けてあげたのに!」
いや、すばらしいんだけどね。制限がな……。そもそも日本で普通に生きてて大怪我するような事なんてそうそう無いし、下手をすれば無能力者の方が生きやすいんじゃなかろうか。
「じゃ、向こうにある扉が転生用のゲートです。頑張ってくださいね〜♪」
天使はそれだけ言うと、そそくさとまた土に潜っていってしまった。なんで足下から出入りしてんだよこいつは。本当に神なのか。
まぁ色々あったが、チートとか抜きに特殊能力として見るならそんなに悪くはない。そもそもあいつは「人智を超えた力」としか言ってなかったしな。俺が勝手にチート能力を貰えると思っただけだ。そうやって俺は無理やり自分を鼓舞して、天使に指示された扉を開いた。
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目を開ける。
静かだ。
人混みの中にほっぽり出されるものかと思っていたが、俺が目覚めたのはトイレだった。なんじゃそりゃ。死んだ場所からリスタートとかですらないのか。ランダムで座標を決めたのだとしたら、ウィザードリィみたいな事にならなかっただけまだマシと思っておこうか。
それにしても、どこのトイレだここは。コンビニや公共施設のものにしてはえらく家庭的というか、そもそも目の前にあるドアが完全に「家のトイレ」のそれだ。まさか他人ん家なのか。だとしたらまずい。警察を呼ばれたらいきなりゲームセットだ。呪いのせいで他人を傷つけられない以上、お縄にかかってからでは助かる術がない。窓から脱出するか? いや無理だ、狭すぎる。いま家に誰もいないことに賭けてさっさと出て行くか。クソ、なんで特殊能力持って転生してんのにトイレからの脱出に苦しんでるんだ俺は。
とりあえず考えても仕方ないので、俺は右手で十字を切り、意を決してドアノブに手をかけた。そして、できるだけ音を立てないように、静かにドアを開けた。
トイレから出た。
素早く周りを見渡す。
……。
サンキュー、ゴッド。どうやら誰もいないようだ。とりあえず第一関門は突破だ。しかしまだ安心はできない。見回してはっきりしたが、ここは明らかに誰かの家の中だ。今廊下に誰もいないだけで、どこかに家の人がいる可能性はある。電気ついてるしね。
物音を立てないよう充分注意しながら、忍び足で玄関の扉へと向かった。ゆっくり、ゆっくりと、俺は歩を進めていく。大丈夫、俺ならできる。こんな所で終わるわけにはいかない。俺の新たな人生はまだ始まったばかりなのだから。
そしてようやく玄関前まで来たとき、女物らしき靴が一足あることに気づいた。やはり誰かいるのか。だとしたらさっさと出てしまおう。玄関の扉を開けるときは流石に音がするだろうが、外に出てさえしまえばどうにでもなる。そう思って足を一歩前に踏み出そうとして、ようやく俺は自分の靴がないことに気づいた。そりゃそうだ。ここでまさかと思い、視線を下に向けて自分の体全体を確認してみると、服はちゃんと着ていた。良かった。「って俺服着てねえじゃん!」みたいなギャグオチは本当にいらないからな。まあ、着ているのもそれはそれで何故なんだとも思うが。これ俺の服じゃないし。天使の粋な計らいってことでいいのか。それなら靴も用意しといて欲しかったぜ。
しかしどうしたものか。裸足のままで駆けてく陽気なサザエさんになるという手もあるが、流石に痛そうだ。かと言って靴を盗んでしまうと文字通り足がつく。しかし、ここで立ち往生している方が何より危険だ。人がいると分かった以上、いつ見つかってもおかしくない。とにかく脱出するのが先決だと判断した俺は、玄関の戸に手をかけようとして……
「だ、誰っすか?」
オー、マイ、ゴッド。
無常にも、タイムアップとなってしまった。
恐る恐る振り返ると、そこにはダイナミックな不法侵入者に怯えた様子の女の子がいた。畜生、女か。男でもお縄の危機には変わりないが、下心という動機があり得る分難易度としてはこっちのが高いだろう。
瞬間、俺の頭はフル回転を始める。議題はひとつ、どうやってこの状況を切り抜けるか?
答え①ハンサムな俺は突如打開策がひらめく
答え②天使がきて助けてくれる
答え③お縄。現実は非情である。
俺が丸をつけたいのは二番だが、あの様子だとどうもアフターケアをしてくれそうにはない。そうだ、酔っ払いのふりをしてみるというのはどうだろう。酔って入る家を間違えたのだ、という言い訳だ。しかし「鍵かけてたんですけど」と言われてはどうしようもなくないか。いや、鍵をかけたどうかなど所詮人の記憶でしかない。証明ができなければゴリ押せるか? いや待て、オートロックだったらどうする。ていうかそもそもこんな真っ昼間からベロンベロンに酔う奴がいるか。仮にいたとしても不法侵入には変わりない。
駄目だ。観念しよう。これほど社会的生命の危機に晒されているのに、俺の異能はこの状況で何一つ役に立たない。つくづく使えない能力だと、今更身に染みて感じるのだった。
こうなれば誠心誠意を込めて土下座をキメるしかない。土下座の心は日本の心だ。これにより法的な過ちさえも覆るだろう。
「すんませんでしたああああああ!」
「え、えぇ〜」
「入る家間違えましたあああ! すぐ出てくんでどうか通報だけはああああ!」
「ちょ、声が大きいっす! とりあえず落ち着いて!」
「は、はい」
「よし。……あ、もしもし? 警察ですか?」
「おい! 約束が違うぞクソ女!!」
「え、『通報しない』なんて一言も言ってませんけど……」
「やめろ!!」
そう叫んで携帯電話を奪い取ろうとする俺。しかし、女の腕を掴みかけた所で俺の手はぴたりと止まった。まるで見えない壁に阻まれているかのように。
「ぐっ……つ、掴めん!」
「……何やってるんすか?」
「見てわからんか! 携帯電話を奪い取ろうとしている!」
「いや、わかりませんけど……」
じと目でこちらを見つめてくる女。よく見ると可愛い。ボブカットの綺麗な髪、長い睫毛、大福のように白く柔らかそうな肌。ピアスやら髪染めやらでややチャラチャラしている所は好みじゃないが、顔はぶっちゃけタイプだ。どうせ終わりならいっそこの場で犯してやろうかとも一瞬思ったが、呪いのせいで手出しできない以上それさえも無理だ。
なんだか泣けてきた。雷に撃たれて死んで、力をもらって転生した末路がこれかよ。まだ開始数分だぞ。俺の人生を返してくれ。
俺は携帯電話を奪うことを諦め、ぺたりと座り込んでしまった。こんな事なら、希望なんて持たせないで欲しかった。無性に惨めだ。俺は本当に悲しくなってきて、数年ぶりに涙を流した。
「わっ! な、なんで泣いてるんすか?」
突然泣き出す成人男性に女も流石に驚いたらしく、わたわたしながら話しかけてきた。
「う゛るざい! もう放っておいてくれよ俺のことは! どうせ刑務所行きなんだろ!」
「心配しなくても、通報するっていうのは冗談っすよ」
「え゛?」
「だって、ケーサツ沙汰とか色々めんどくさそうじゃないっすか。私、面倒なことは嫌いなんす」
「あ、そう……」
侵入者の俺が言うのもなんだが、ちょっと不用心じゃないか。成人男性が若い女の家に押し入ってんだぞ。恐怖とかないのかこいつは。と思ったが、先ほど携帯電話ひとつ奪い取れなかった醜態を見ればそんな気も失せるのかも知れない。
「その代わり、なんも盗ってないっすよね? 家を間違えただけなら許すっすが、ドロボーなら容赦しないっすよ」
「と、盗っておりません!」
「信じられないっす。今すぐ脱ぐっす」
え? ナニコレ? そういう展開? 普通こういうのって男女逆じゃないか。色々引っかかる所はあったが、今の俺には選択権などない。俺は従順な召使のごとく、言われるがままに服を脱いだ。まずは上、次に下。女は俺のシャツの胸ポケットや、ズボンのポケットを裏返したりして確かめている。次いで俺が下着に手をかけようとすると、女は急に赤面して手を前にやり叫んだ。
「わぁぁ! な、何してるんすかっ!」
「え? 何って、服を脱いでるんだが」
「ぱ、パンツは脱がなくていいっすよ! 通報するっすよ!?」
なんじゃそりゃ。普通こういうのは下着を脱がずにいたら「下もっすよ」とか言われる展開じゃないのか。そうなると思って早めに脱ごうとしてやったのに。渋々と俺はおろしかけた下着を上げた。
女は目を背けながらもチラチラとこちらを見ている。耳まで真っ赤にして。なんだこいつ。可愛いな。彼氏とかいるんだろうか。見た目のチャラさ的にはいそうなもんだが、それにしては初心すぎる気もする。そんな事を考えていたら、向上心に溢れた俺の愚息が天を突こうと蠢き始めてしまった。
それを見た女はさらに顔を赤らめ、
「へ……変態!!」
と叫び、振り上げた右手を俺の頬に思いっきり叩きつけた!
ばちーん!
これが俺が予想した音。
ゴンッ。
これが実際に鳴り響いた音だ。
天使。お前、バカだろ。加減ってものを知らないのか。俺がメタルみたいになっとるやないか。「絶対に傷つかない」って、そんな無理矢理鉄にするみたいなやり方でやってんの? と思い自分の手で先ほど殴られた頬を触ってみると、ふにふにしていた。強い外圧が加わった時だけ性質を変えるということだろうか。なんだかなぁ。
気づけば女は右手を高々とかかげ、小指をぶつけた赤子のごとく声なき声をわななかせて悶絶している。
「いっ……たぁ〜〜!」
「だ、大丈夫か?」
「大丈夫じゃないっすよ……あ、あんた人造人間かなんかっすか……」
「まあ、そんなところですわ」
「え、マジっすか!? すげーっす!」
納得された。こいつもバカか。まぁ、人間の頬を殴ったのに金属みたいな音出されたら無理もないのか。
「もう一回殴ってみてもいいっすか!?」
「いや、ダメに決まって―」
「とりゃー!」
ゴン。
「いって~~~っす!」
笑っとる。なんだ、コイツ。箸が転んでも笑う年頃か。少年のように目を輝かせてらっしゃいますけども。
女はすっかり俺を人造人間だと信じたのか、興味深そうにあちらこちらを触ってくる。まだパンツ一丁なんですけどね、こっちは。先程の恥じらいはどこへ行ったのか。
「ふんふん、なるほど……肌は人間にしか見えないっすけどね~……あ、毛穴まである! どうやってるんすか?」
女はしばらくふんふん言いながら痴漢魔のように俺の肌を触りまくっていたが、下腹部まで行ってようやく気づいたのか、ぱっと飛び退いて気まずそうに真っ赤な顔をうつむけた。何? 盲点が馬の視野くらいあるの? それとも集中すると周りが見えなくなる系女子?
まぁ、何にせよ人間でないと思われたのは好都合かも知れない。ここは奴の勘違いに乗っかってみよう。
「すみません。実は入る家を間違えたというのはウソで、私の内部プログラムが動作不良を起こしてこの家に迷い込んでしまったのです」
「え? でも、鍵かかってたはずっすけど」
チクショウ。やっぱりか。いや、案ずるな。今の俺は人造人間なんだ。できないことなどない。
「私はあらゆる家の鍵を解錠するプログラムを搭載しているのです」
「えぇ――! マジすか!? すごすぎるっす! 日本のケーサツは真っ青っすね! 安全神話崩壊っす!」
本気で言ってんのか、からかってるのか、分からなくなってきた。ていうか、こいつ警察に個人的な恨みでもあんのか。
「ところで、あんたは何のために造られたんすか?」
「何のため?」
「そうっす。人造人間さんってことは、なにか目的があって造られたんですよね?」
困ったことになった。目的なんて考えてないぞ。ええい、こうなりゃヤケだ。思いつくままに話してやる。
「私は……戦争用に生み出された人造人間です」
「戦争?」
「はい。秘密組織によって開発された、人を殺すことに特化した機械です。私の身体はとても頑丈に造られていて、どんな兵器でも傷がつきません。
でも、ある日私のプログラムにバグが起こり、私は『自我』を持ってしまったのです。『人を殺すためだけに生まれてきた』という事実に耐えきれなくなったのです。
その日から、私のCPUは『人を傷つけること』を拒絶するようになりました。これでは戦争兵器としては使えません。
このことが機関員に判明すれば、私は処分されるでしょう。だから私は研究所を抜け出してきたのです」
「そうだったんすか……」
マジで信じたよ。こいつの頭はメロンパンで出来てるのか。
「でも、どうして私の家に?」
あ、そういうところは気づくのね……。しかし、ここまで人造人間設定を掘り下げた以上後はどうとでもなる。
「研究所を抜け出す際、私は同施設で研究中だったテレポートポッドを使いました。でもあれは試作品で、どこに転送されるかは分からなかったのです。気がついたら私はこの座標にいました」
あながち嘘はいっていない。俺がここにいるのは天使という壊れたテレポートポッドのせいだからな。
「とにかく、ご迷惑おかけしました。どうか、このことはご内密にお願いします。機関にとって我々戦争兵器は機密事項ですから、私の存在を知った者は消しに来るでしょう。私がここに来たと知れたら、あなたの身も危ない」
「ま、マジっすか……」
よし。こうやって脅しておけば、まず警察を呼ばれることはないだろう。これで俺は堂々とこの家を出ていけるし、こいつとは二度と会うこともない。こいつはこの件について誰にも口外できない。条件はすべてクリアされた。
「それでは、私はこれで……」
「待つっす!」
がしっ! と腕を掴まれた。
え?
いや……なんで引き止めんの……?
ていうか、なんで俺はこいつの腕を掴めないのにこいつはOKなんだよ。まぁ痛くもなんともないし、何なら女の子にぎゅっと掴まれて幸せだけど。
「これからどうするっすか? 外に出たらまた機関に追われるんすよね?」
「それはそうですが……これ以上あなたに迷惑はかけられません」
「そんなのダメっす! せっかく良いロボットになれたのに、死んじゃダメっす!」
め、めんどくせぇ~。どうすりゃいいんだ。面倒事は嫌いなんじゃなかったんすか。こんな得体の知れんロボ庇うほど面倒になりそうなことはないが。
そう思って女の顔をよく見ると、「おもしろくなりそうっす!」とはっきりと書いてあった。マーカーペンで。
「大丈夫、私にいい考えがあるっす! とりあえず、中に入るっすよ!」
「ちょ、ちょっと!」
こうして俺は名も知らぬ女に腕を引かれ、一度は開きかけた外へと続く玄関の扉から遠ざかっていく。
え……これ、どうなんの? 俺、今後マジで人造人間として生きてかなきゃいけないの? 答えてマイエンジェル。
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