インビンシブルマン-2話バーバー井上
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https://resurrection237.blog.fc2.com/blog-entry-1157.htmlの続き。冒頭数行以外はほぼAIに書かせた。面白さはともかく、文体の整合度を見れば解るよ、いかにAIのべりすとがヤバいのか。今後コイツに全部続き書かせますわ。いじめの話はすがに荷が重そうだけど、NebtLemとかもこっちに投げて良いかも知れない。AIに責任押しつければ制約回避できるワザップか?
しかし欠点はある。まず第一にクソ重たい。2行書くのに下手すりゃ3分とかかかる。アホか。サーバーが常時パンクしてるかららしく、プレミアム会員になれば優先されるとかいうどこかで見たようなシステムを取っているらしい。まあこれもエアフレンドみたいにほぼとりがさめれば収まるだろう。あと、多分みんながエロ小説書かせまくってるせいだと思うのだけど、全体的に話が官能的な方向に転げがち。殆ど修正はしてないんだけど、コンテンツフィルターオフにしてるから全部手放しでやらせると普通にBANモノの展開に持っていきだすからその点だけ汎用性が低いかも知れない。まあ、ほとんどの用途においてはそれくらいの方が便利なのだろうが。
なんといっても自分で執筆しないってことは結局先行き不明ってことだから、ワクワク感がすごいのよね。このあたりワクワクした。一体何が起こるんです!?って感じ。
「さあ、座るっす座るっす」
「はぁ……」
井上葉月。それがこの女の名前らしい。
結局俺は人造人間と勘違いされたまま、こいつの家に住まわせてもらうことになった。結果オーライといえば結果オーライだが、今後の生活を考えると胃痛で死にそうだ。なんで異世界転生までしてこんな心労を味わわねばならんのか。
「それで、なんで俺は椅子に座らされてるんだ?」
「お兄さんの髪がボサボサだからっすよ。そういえば、名前はなんて言うんすか?」
名前。そういえばそれも問題だ。バカ正直に転生前の名前を言っても色々問題になるよなぁ。一応戸籍上は死んだことになってるはずだし。そもそも今俺は人造人間っていう設定なんだから、それっぽいIDとかにしといた方が良いのか?それとも夏目漱石チックに「名前はまだない」とか言ってみるか?いや、ここは例の江戸川コナン戦法で本棚に目を向けて目に入った文字をつなげてみるか。
『インビンシブル』
『チェンソーマン』
なんちゅうラインナップなんすか、センパイ。とんだサブカル女だぜ。しかし俺は一度決めたらやる男、繋げてやるよ!この二つを!えーと……
「イ……インビンシブルマン」
だっせぇ~。爆裂にだっせぇ~。アンパンマンの方がまだマシなレベルでだせぇ。今後一生この名前を背負うことになると思うと目ン玉飛び出そうになるぜ。しかし井上は存外お気に召した様子で「かっこいいっす!」とか言ってやがった。何なんコイツ?精神年齢が小学一年生の男子か?
「じゃあインビンシブルマン……長いっすね。略してシブっちでいいっすか?」
「そんなポケスペのオーキドみたいなニックネームの付け方あるか?」
「だめなんすか?」
「いや、いいけど……」
「じゃ、シブっち、今からバーバー井上が髪を切ってあげるっすよ~」
「?お前、美容師なのか?」
「いや、見習いっす。でも将来的にはそうなる予定なんで実質カリスマ美容師っすね」
全くなんにも実質じゃないが。頼むから波平みたいな奇抜なヘアーにはしないでくれよ。
「じゃ、じゃあ……くれぐれも、気をつけてな」
「任せるっす! 大船に乗ったつもりでいるっすよ~♪」
そう言うと、彼女はハサミを持ってきて、俺の後ろに回った。鋭利な刃物を持った他人が後ろにいるのってこんなに怖いのか。まあ、異能力のおかげでミスっても傷はつかないんだけど。
「失礼するっすよ~」
しかし、俺の心配とは裏腹に、井上は意外とちゃんとしていた。手際よくカットケープをかけ、棚からよくわからん洗濯バサミみたいなやつ(後で調べたが、ヘアクリップというらしい)をつけ始めた。「見習い」と言っていたので、バイトかなんかやってるんだろうか。俺も美容師のことなんか全然知らないが、彼女の手つきが素人のそれではないことはわかった。これならまあ、めちゃくちゃなことにはされないだろう。
「お客さん、最近どうっすか~?」
「ん、ああ。まあまあだよ」
「そっすか、それはよかったっすね。ところで、この前面白いことがあったんすよ」
「へえ、どんな?」
「うちの店に、超イケメンのお兄さんが来たんすよ。背が高くて顔が良くてスタイルもよくて、モデルみたいだったっす」
「ほー」
「で、そのお兄さんがシャンプー台に行った時なんすけども……」
「うん」
「なんとそのお兄さん、いきなり服を脱ぎ出したんすよ」
「なんで!?︎」
「いや、お風呂に入るのかと思ったらしいっす。それで、脱いだ服を着直して出て行ったっす。その後ろ姿を見たら、背中に『I LOVE NYANKO』って書いてあったっす。あれ、絶対お兄さんの趣味っすよね。なんであんなこと書いたんだろう。お兄さんの彼女、きっと恥ずかしかったっすよ。もうちょっと考えてあげて欲しいっすね。まあ、お兄さんの彼女がかわいそうっすけど」
「いや、そうじゃなくて! なんでお前の店で全裸になるんだよ!」
「私に聞かれてもわかんないっすよ~。でもよく考えたらケーサツ沙汰っすよね。店長も私もウケちゃって、特に被害もなかったしめんどくさいから通報しなかったんすけど」
なんなんだ、この町は。頭のおかしいヤツしかいないのか?それともコイツの人生が特別に奇妙なだけなのか?そしてそれを気にも留めないコイツのゆるさというかマイペースさはなんなんだ。頭が痛くなってきた。外部からの攻撃は無敵でも頭痛とかはするんだな。いよいよ役に立たねえなこの特性。そういえば、髪も普通に切られてるし、どこからどこまでが自分なのかもよくわからん。あの天使の言い分からすると、それも自分の認識次第なんだろうか。まあ、俺も髪を自分の体の一部とは思っていないが。
ちょきちょき、と小気味のいいハサミの音が響く。そういえばどんなヘアスタイルにするかとか、なんにも聞かれてないけど、どうするつもりなんだろうか。これで丸坊主とかになってたら犯してやろうかな。無理だけど。
「シブっちはこれからどうするか決めてるんすか?」
「今は何も……」
「そっすか~。あれから考えたんすけど、やっぱりシブっちみたいなすげーロボットがするべきことってひとつだと思うんすよ」
「というと?」
「人助けっす!」
「……は?」
コイツ……目ぇきらきらさせてやがる。少年漫画みたいな顔しやがって。
「だから、困った人のところに行って、力を貸してあげるんすよ!みんなを幸せにする正義の味方って感じでカッコよくないすか?」
「なんで俺がそんなこと……」
「だってシブっちは無敵じゃないっすか。殴ってもビクともしなかったし。私、こう見えても空手やってたんすよ?黒帯っすよ、黒帯!まあ、中学でやめちゃったんすけど」
マジかよ。たった今、俺の能力が役立つ可能性が少しだけ生まれたぜ。こんなワクワクの塊みたいな女と丸腰で同居してたら命がいくつあっても足りないだろう。
「気絶させるつもりで殴ったのに、ぜんっぜん効かないんすもん。さすが人造人間っすね!」
「いや、まぁ……はい」
「だから、シブっちならきっと大丈夫っすよ。人助け、やってみましょうよ。私も協力するっすよ!」
「えぇ~……」
「イヤなら今すぐ不法侵入でケーサツに突き出すっすよ。秘密組織に捕まってもいいんすか?」
「ま、待った待った!わかった、やるよ!」
コイツ、サラッと脅してきやがった。別に秘密組織云々はでっちあげだからどうでもいいが、警察沙汰はまずい。この能力じゃどう考えても脱出できないしな。くそ、全然無双してねえよ俺。無双の対極だわ。
「よく言ったっす!じゃあとりあえず、まずは私を助けてほしいっす。私のバイト先の店長さんが、なんかヘンなこと言い出して……」
「変なこと?」
「『井上ちゃん、君は本当にウチの看板美容師としての素質があると思うんだ。君のような美しい女の子がいるだけで、美容室全体の売上が跳ね上がるような気がするよ』って言ってくれたのに、『いや~それほどでもないですよぉ、へっへっ』なんて適当に流してたら、『その謙虚さがますます気に入った』って言って抱きついて来たりして……。ホント勘弁してほしいっすよねー」
「……それで?その店長をぶっ飛ばして欲しいのか?」
「いや、そうじゃなくって、店長ってもともとこんなことする人じゃなかったんすよ。だからきっと何かあったと思うんすけど、それがわからなくて……。店長を元の店長に戻して欲しいんす」
それは、やや……いや、かなり俺の手に余る仕事じゃないか?探偵とかに頼めよ。
「シブっちならきっとステルス迷彩機能とか持ってるっすよね!?店長を尾行するなりして、何があったか突き止めて欲しいっす」
「いや、俺にはそんなステキな機能はないし、そんなことならお前が直接調べりゃいいじゃねぇか」
「そうしたいのはやまやまなんすけど、私はちょっと教習所とかもあって忙しいんで…………それにシブっちが店長の相手してくれるんなら、お礼にお店にあるもの何でも好きなのあげるっすよ」
いらねぇ~。美容院の備品、この世で一番いらねぇ~。ちょっと良いシャンプーくらいだろ、もらえても。しかし端から俺に断るという選択肢はない。従うか、ブタ箱に行くかだ。
「……わかったよ」
「ほんとっすか!?やったー!さすがシブっちっすね!」
なんで出会って半日も経ってない見知らぬ男にここまでフランクになれるんだ、こいつは。鉄のハートかよ。こういう性格のヤツってもしかしてデフォルトで異能を持ってるんじゃないかという気さえする。俺のクソ能力と交換してくれねーかな。
「あ、今更っすけど髪の方どうすか?どんな感じがいいとかあります?思いっきりカッコ良くしますけど?」
「普通でいい」
井上は俺の言葉を聞いて少し考え込んだ。なんだ、意外に常識的だなこいつ。俺が「思いっきりダサくしろ!」とか言ったらどうするつもりだったんだろうか。ちょっと試しに突飛なことを言ってみるか。
「ところで井上は彼氏とかいるのか?」
「ふぇっ!?い、いきなりなんすか!いないっすよそんなの!シブっちのばか!」
井上は俺の後ろ髪を切ったあと、俺の顔を見て、自分の髪の毛をくるりといじった。なんだそのしおらしい反応。
その顔で彼氏いないは嘘だろお前。……いや、あながち嘘でもないかもな……いくら容姿が良くても中身がわんぱく怪獣じゃ続かないわな。第一、俺に嘘つく必要性ないし。あ~くそ、あわよくば付き合いたいがコイツからすれば俺は風変わりなペットみたいな存在だろうし、そもそも絶対的な権力勾配があるから無理だろうな。どうせなら洗脳とか時間停止みたいな能力が欲しかったぜ、まったく。
「……シブっちって、ロボットなんすよね?ロボットでも恋とかするんすか?」
「……いや、しないな。恋愛感情とかはよくわからない。人間みたいに振る舞えるようプログラムされてるだけだ」
「そうなんですか。じゃあ私、シブっちと付き合っちゃおうかなぁ~」
「あ゛ぇっ!?」
「冗談っすよぉ。じょーだん」
何これ?からかい上手の井上さんか?誘われてるってことでいい?そういうことでいいんすかね? 俺の動揺を見抜いたのか、それともただふざけただけなのか。どちらにせよ、この話題についてはこれ以上追求しないことにした。
「ふんふ~ん♪愛の~前に立つ限り~♪」
「……なんの歌だ?それ」
「あ、ごめんなさい。髪切ってると自然と上機嫌になって、つい歌っちゃうんすよね~」
「いや、いいけど……。どっかで聞いたことあるような」
「おっ、知ってます!?仮面ライダークウガっすよ!かっこいいんすよね~」
「お前本当に女か?小学校から飛び出してきたハルキくん(7)が憑依してない?」
「失礼っすねぇ。だいたい今の小学生はクウガなんて知らないっすよ。今やってるのはリバイスっすから」
そういう問題じゃないんすけどね。まあ、いいか……。
「っと、いい感じの長さになったっすね。じゃ、一旦流すんでシャンプー台の方来てくださいっす」
「シャンプー台って言っても……ここお前の家だろ?そんなものあるのか?」
「お風呂があるじゃないっすか。ささ、こっちに来るっす~」
カワイコちゃんとお風呂か、最高だね。俺が異世界転生したクソ能力持ちの人造人間(誤解)で目の前にいる女が小学10年生じゃなかったらな。
***
「到着っす~。じゃ、服脱いでもらえるっすか?」
「嫌だ」
「……ああ、もしもし?警察っすか?」
「決断が速すぎるだろ!わかった、わかったから!」
「わかってるならムダな抵抗しないで欲しいっす」
「はぁ……。それで、どこまで脱げばいいんだ?」
「もちろん全部っすよ。あ、下はタオルで隠してくださいよ?」
そういうところは常識的なんだな。こいつ、常識的な部分とめちゃくちゃな部分が入り乱れていて行動が全く読めんわ。
結局俺はされるがままに服を脱がされ、風呂桶に座らされた。こんなザマ、子供の頃親と一緒に風呂に入ってた頃以来だわ。
「じゃ、流してくっすよ~」
俺の頭に、ぬるめの温水がシャワーヘッドより放水された。頭全体を包み込むような水圧で丁寧に洗われていく。ああ……極楽だな……なんか眠たくなってきたぞ………… 井上が俺に語りかける。
「ふっふ~。お客様、かゆいところはございませんか~?」
「お前、それ言いたいだけだろ」
「あ、やっぱりわかるっすか?お店でも毎回これだけは絶対言ってるんすよ~。ほとんどのお客さんは『ないです』って言って終わりっすけどね」
まあ、だろうな。通過儀礼みたいなもんだし。
井上はしばらくわしゃわしゃと俺の髪を洗い続けた。正直、モノホンの美容師と遜色ないくらいに上手いと思うが、プロとアマの違いなんてわからんし、井上が特別上手いのかはよくわからん。
「サービスでマッサージしたげるっすよ~。評判いいんすよこれ」
井上の細い指が、俺のこめかみ付近を撫で回す。井上の右手は俺の左の耳へと流れていき、左手では右の耳に優しく触れている。そしてそのまま耳たぶを引っ張られたり、耳の裏側や穴の周りなど色々と弄くり回されている。確かに気持ちいいは気持ちいい、が……これ……マッサージか?「あ、あの……これって本当にマッサージなんですか……?」系のエロ漫画みたいになっとるやないか。はじめに服を脱がせたがったことといい、やっぱりこいつ魔性の女なんじゃないだろうか。
「にしても、ほんとにすごいっすね~。とてもロボットには見えないっす。肌も柔らかいっすし……自在に固くできるんすか?」
「まあな」
「なんか、触ってるとすごく不思議な感じっすよね。どんな仕組みなんすか?」
「企業秘密だ」
「えー、教えてほしいっすよぉ」
「ダメ」
「ケチ」
「ケチで結構」
「む~。いじわるなシブっちには……こうっすよ!おりゃ!」
井上の指が俺の頭をぐにぐにとマッサージし、耳の穴の中にまで侵入してきた。うっ……これは……なかなか……いい感じだ。俺は思わず声が出そうになる。井上は俺の反応を見て楽しげに笑っていた。こいつ、床屋より指圧師とかになった方がいいんじゃないか。井上はひとしきり指圧マッサージという名の快楽拷問で俺を責めたのち、やがて満足したようで、その手を離していった。
「……えへへぇ」
「な、なんだよ。気持ち悪いな」
「ひどいっす!いや、なんか、楽しいな~て思って」
「あ?」
「私、一人っ子なんすよ。だから弟とかお兄ちゃんとかに憧れてたんすよね~」
あと、シブっちってなんかペットっぽくないっすか?それも憧れだったんすよ」
「お前の中で俺の評価低すぎるだろ」
まあ、それは俺も思うが。しかし「弟とお風呂に入るお姉さんプレイ」の次あたりにくるであろう「犬と一緒にお風呂に入る飼い主ごっこプレイ」はどう考えても変態チックだしちょっと遠慮したいところだ。
そうして井上と俺の他愛もない会話は続いた。
***
「はい、完成っす!」
「お、おう……」
鏡を見ると、そこには爽やかなイケメンがいた……とまでは言わないが、だいぶマシに見える俺の姿があった。髪型ひとつでこんなに変わるものなのか。ラノベ主人公みたいにボサついていた髪は、ツーブロックまではいかないが結構しっかり刈り上げられた清潔感溢れる短髪に早変わりしていた。
「ほら、見てみてっす!似合ってるっしょ!?」
「…………まあな」
「えへへぇ、ありがとうございます!」
井上は嬉しそうだ。俺の髪を切ることに満足したらしい。
「じゃ、バーバー井上のお仕事も終わったことっすし、いよいよインビンシブルマンの出動っすね!」
「あのさぁ……今更だけど、俺が怖くないのか?」
「怖い?なんでっすか?」
「だって、どう考えてもおかしいだろ。人造人間がいきなり家に転がり込んでくるなんて」
「別におかしくはないっすよ?ロボット工学三原則って知ってます?」
「『ロボットは人間を傷つけてはならない』『人間に危害を加えてはいけない』っていうアレだろ?でも俺は戦争兵器だぞ?」
「でも、人を傷つけるのが嫌になって逃げ出してきたんすよね?じゃあ大丈夫じゃないっすか」
「そもそもなんで俺がロボットだって前提をそんなアッサリ受け入れてんだよ!」
「違うんすか?」
「それは……違わないけど、普通は信じないだろ?」
「えー、そうっすかね?」
「そうだよ」
「私はシブっちのこと信じるっすよ!シブっちは優しいっすからね」
「優しくなんかねえよ」
「優しいっすよ。シブっちは。少なくとも、私を傷つけたりはしないっすよ」
「なぜそう言える?」
「はじめに私と会った時、ケーサツに通報するのを止めようとしたっすよね?あの時、あと一歩で私の電話を奪えたはずのシブっちの動きがピタリと止まったんすよ」
あの一瞬でそんなことに気づいてたのか。よく見てるなこいつ。
「空手やってたから言えるんすけど、あの止まり方は人間の反射能力じゃ無理っすね。だから多分、今のシブっちには人を傷つけられないセーフティーみたいなのがかかってるんじゃないすか?」
……おいおいおい。なんだよこいつ。IQ300か?そんな理詰めで俺を安全と認識していたのかよ。バカかと思ったら名探偵顔負けの推理力だし、怖いよママ。助けてくれ。
「それに、立場としては私のが上っすしね。もしロボットじゃないならケーサツに突き出せば終わりっすし」
「お前……」
「そんな怖い顔しなくても、そんなことしないっすよ。……シブっちのことを信じてるって言ったのは本心っす。それだけは覚えといて欲しいっす」
「…………わかったよ」
「わかってくれればいいっす」
「で、これからどうするつもりなんだ?」
「とりあえずシブっちの服とか買いに行くっすよ。髪型はだいぶ変わったっすけど、もっと変装しないと外出るのはまずいっすよね?」
「ああ、確かに」
「じゃあ行くっす!」
「って、ちょっと待て。その理屈だと俺、『服を買いに行く服がない』状態になってないか!?身バレしちゃまずいんだから外出れないんだって!」
「安心するっす。こんなときのためにとっておきのアイテムがあるっすから」「なに?」
井上は自分の鞄をガサガサあさりはじめた。なんとなく気になるので井上の後ろに立ち、何をやっているのか覗く。そして思わず呟いた。
「おい、お前まさか……」
「へっへっへ。頭のお固い組織さんとやらは、まさか人造人間がこんなことするなんて思わないっすよね?」
俺だって思わなかったわ。あろうことかヤツの手に握られていたのは、女物のウィッグ、フリフリのスカート、化粧セット……即ち女装具一式である。
「井上ぇぇぇ!お前ふざけんなよ!俺にこんな格好しろっていうの!」
「きっと似合うっすよ~♪これ以上の変装はないっす!」
「そういう問題じゃない!」
「大丈夫っすよ、何も一生女装しろってわけじゃないっすから。新しい服を買いに行くまでの我慢っす」
「いや、待て待て待て、よしんば上手くいったとしてもその格好で男物の服買いに行くのは不自然だろ!」
「心配性っすね~。逆ならともかく、女性がメンズファッションを買いに行ってもそんなに不自然じゃないっすよ。さー、着替えた着替えたっす!」
井上はニコニコ笑いながら俺の背後に回る。俺は抵抗虚しく、手際よくウィッグをつけられ、化粧までされてしまっていた。……どうしてこうなった? つーかウィッグつけるなら髪切る意味なかっただろ。
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