241023
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小説がまったく書けない。どういうこったい。
でも「小説家になりたいけど小説が書けない」って人の中には、「小説はすべからく深遠で重厚な主題を扱わねばならない」「小説の文章はすべからく名文でなければならない」みたいに気負ってしまって、逆にそれで小説が書けなくなってる人も結構いそうな気がする。
小説の内容なんて自分がやりたいけどやれないことを主人公にやらせときゃいいんだし、文章なんて「スピリチュアルな感覚がアタシのカラダを駆け巡った」「二人が向かった先は地元で有名なスーパーに足を踏み入れた」「キンキンキンキンキンキン」でいいんだよ。
https://twitter.com/kasuga391/status/1037998273510797313
まさしくカスガ氏の言うように、自分の中でハードルが上がりすぎているのだと思う。
文章力なんてものはねえ、基本的にはやはり関係がないのよ。少なくとも小説という媒体においては、大事なのは読みやすさと想像力だ。
文章力っていうのは装飾であって、出力をきれいに飾る外面でしかない。中身が伴わなければいかに美麗な言葉で飾っても面白い作品は生まれない。
思えばさんざ馬鹿にされた「キンキンキンキン」の作者もめちゃくちゃ売れてるらしい。ラノベ界では上澄み中の上澄みだとか。そう、それでいいんだよな。いいんだよ。
他人事ならそれで受け容れられるのに、どうして自分の書く文章となると素直に頷けないのか。畢竟、自意識が邪魔をしているにすぎないのです。これこそが小説家がまず最初に排撃すべき敵と言っていいでしょう。
文章力がついてから、構成を学んでから、地力をつけてから……そうやって何度も先送りにして結局何も生まれない。
『30になろうと40になろうと奴らは言い続ける 自分の人生の本番はまだ先なんだと 「本当のオレ」を使ってないから今はこの程度なんだと そう飽きず言い続け 結局は老い 死ぬ その間際 いやでも気が付くだろう 今まで生きてきたすべてが丸ごと「本物」だったことを!』
これになっちまうよ。


これでいい、これでいい、と自分を納得させる段階がまず必要かも知れません。
虚航船団は面白かったし味のある文体ではあったけど、読みやすさという意味ではクソゴミと評価せざるを得ないし多分九頭七尾先生に書き直してもらった方が一般には読みやすくなると思う。夜と霧は傑作だったけど、その傑作たる所以は文体にはない。内容にある。内容さえよけりゃなんでもいいんすわ。
ただ (https://youtu.be/ZGYsxsm0i8g?si=45PDpB-5LVY2haLq&t=761)
たかがプライド、されどプライド。ま~~、無職転生くらいが最低ラインかなって気もしますね。かなり丁度だと思う。お世辞にも白眉とはいえないが、酷い文というほどではまったくない。
とはいえ無職転生ってなろうだと文章的にもだいぶ上澄みなんかな。知らんけど。
でも個人的には「鬼人幻燈抄」とかまで行くと行き過ぎな気もしちゃうんですよね。あれを文章力がある、と表現するのは果たして正しいのか。そういう領域にきている。
まあ……あれです。つべこべ言わずに書けちゅう話ですわな。
今からぁ、俺が本当に好きな谷川俊太郎の詩の節を教えるから、よく聞けぇ!
声と文字に別れを告げて
君はあっさりと意味を後にした
拷問されているあいだじゅう、彼の頭はラズベリージャムの色と匂いと味とによって占められていたが、それは生きる理由を形成しなかった。
どこか遠くで稲の芽は緑
それでも私は生きたくなかった
さて、ここから先の物語はクラリネット自身の口から
言葉ではなく音楽で語ってもらいましょう
もう折るな不妊の鶴は
祈るだけでは足りない
誓うだけでは足りない
この世は他人だらけである
他人でないのは
自分だけだと思うと さびしい
思い出よりも記憶よりも深く
ぼくらをむすんでいるものがある
それを探さなくてもいい 信じさえすれば
あなたは悲しく思わないか
この教室に青い海のないことを
しじまと刺し違えて
死のうよ
憎んでください
憎しみがあなたを幸せにするものなら
世界が私を愛してくれるので
(むごい仕方でまた時にやさしい仕方で)
私はいつまでも独りでいられる
平和を踏んずけ
平和を使いこなし
手に入れねばならない希望がある
平和と戦い
平和にうち勝って
手に入れねばならぬ喜びがある
葬儀屋さんがあらゆる葬式のうちで最高なのは食葬ですと言った。
父はやせていたからスープにするしかないと思った。
餓えながら生きてきた人よ
私を拷問するがいい
私はいつも満腹して生きてきて
今もげっぷしている
私はせめて憎しみに価いしたい
愛の貸借を暗算する二人
もともと盗みあった心なのに!
思い出は今日であった
死は今日であるだろうそして
生きることそれが烈しく今日である
人がいないと室は
だんだん宇宙に似てくるのだつた
夜 寝床に入る前に
誰でも一度は悲しそうな目付をする
さて朝食には
嘲笑を食おうか
祈りを食おうか
と考える
ほんとにしぬのは わるいことだから
おんがくもきかずに
あおぞらもみずに
わたし ひとりで もくせいまでいってくるわ
人は本当はいつもひとり
でも嘘ついて生きている
こわいから
わたしをいじめるあなたは にくくない
あなたも ほかのだれかに いじめられてる
そのほかのだれかも また もっとほかのだれかに
わたしたちは みんないじめられてる
めにみえない ぶよぶよしたものに
おとなたちがきづかずにつくっているものに
野菜ジュースの気休めがきらい
かけがえのない一日はどこ
ある日僕は思った
僕に持ち上げられないものなんてあるだろうか次の日僕は思った
僕に持ち上げられるものなんてあるだろうか
そしてもう私は
私がどうでもいい
無言の中心に到るのに
自分の言葉は邪魔なんだ
ほとんど人間を裏切るに等しいところでぼくは書いている
どんな言葉にも騙されないことを願いながら
名誉を盗むことはできる
だが誇りを盗むことはできない
元ネタが全部わかった人は谷川俊太郎マスターだ!
ちなみに、「全文」を評価対象にした場合、一番好きなのは実は「梅雨」かもしれない。
谷川俊太郎の梅雨って詩、見れる人は見てみてください。あんなきれいな十二行ないよ。
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