脚本ロジック
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なんか椎名林檎の曲名みたいなタイトルになりましたが、脚本術まとめ。
作り方は大きく分けて二つ:演繹法と帰納法がある。ロジックとして考えるなら、帰納法の方が優秀と思われる。
帰納法は「かんたんに言って、お話を最初から行きあたりばったりに考えていくこと」
演繹法は「最後のオチを考えて、それに合わせてお話をつくることである。」
出典 手塚治虫 マンガの描き方―似顔絵から長編まで
【完成までの流れ】
ジャンニ・ロダーリ法などでアイデアを出す
↓
ログライン作成(一行程度で物語を説明)
↓
テーマを決める?
↓
BS2や三幕構成にはめていく
↓
リライトしてえええええええええ
【一番はじめのアイデアの出し方】
ジャンニ・ロダーリのやり方が特に優秀な気がする。
非平凡な物語は単純な二つの言葉の併置によって容易になし得られる。(例:犬とクローゼット)二つの言葉の「距離」が離れているほど、それらは魅力的で興味深いものとなる。「馬犬(Horse-dog)」は、それぞれ動物どうしの組み合わせなのでさして面白くない。そのふたつが隣り合わせているのを見たことがないような、言葉同士の「画期的距離」が物語を生み出す環境を形作るのだ。
1.二列の表を作り、左右にそれぞれ自由に単語を記入する
2.各列から一語ずつ取り出し、ユニークな言葉の組み合わせとなりそうなものをいくつか線で結ぶ
3.その中からポテンシャルのありそうな複合語を選択し、それらを四つ若しくはそれ以上の前置詞を使って色々と組み替えてみる
例:
The dog with the closet(犬とクローゼット)
The closet of the dog(犬のクローゼット)
The dog in the closet(クローゼットの中の犬)
The dog on the closet(クローゼットの上の犬)
また、これらのメソッドは名詞と前置詞のみでなく、動詞や副詞にも応用できる。
名詞と動詞 <街が><飛行する>
主語と述語 <ミラノが><海にとりかこまれる>
修飾語と主語 <ネコ捕りの名人><わにが>
接頭語とありふれた単語 super-man
【仮筋の作成】
いろいろな手法があるが、すべてに共通する大前提として「メインテーマ」をひとつに絞ることが重要である。
物語は「メインテーマ」をどこに据えるかで、舞台設定が同じでも進行ががらりと変わってくる。例えば、「Aと知り合い仲良くなるが、Aが失踪してしまう」という物語の場合、「仲良くなる」事に主眼を置くなら二人のインタラクションが物語の大部分を占め、「失踪」は起承転結の「転」になり物語を盛り上げる舞台装置となる。逆に「失踪」に主眼を置くなら、「知り合った仲良くなった」パートは映画で言うなら冒頭10分程度で収まる「あらすじ」あるいは舞台設定程度にとどまり、本筋はAを奪った何者かを探し出す追跡劇になる。
また、もうひとつほぼ共通するものとして「主人公から大切なものを奪う」というものがある。奪うというのは、実際に劇中で奪う必要性はなく(それでもいいんだけど)、主人公は物語開始時に「不完全」でなければならないということ。何かが欠落している主人公を作り出し、物語が終わる時にその欠落が埋まっている、というのがカタルシスにつながるらしい。
【感情曲線】
視聴者の感情がこんな感じで動くような物語だといいらしい。
【ピクサー方式】
- 主人公の紹介。および主人公に目的を与える。主人公の好きな物、特徴づけるものを明らかにする。
まず、主人公の
・状況設定
・大切なもの
・弱点
を決める。「弱点」とは「大切なものを愛し過ぎ、執着しすぎるとそれが弱みとなる」ということ。
2.「嵐雲」を起こす。あくまで嵐の兆しであり、災難そのものではない。
3.「大切なもの」を失う。
4. 主人公に「屈辱」を与え、世界は不公平だと感じさせる出来事を起こす。
5. 主人公を「岐路」に立たせ、2幕へ進む。
屈辱を受けた主人公は
a) 健全な道
b) 分別のない、無責任な選択
のどちらかを選択しなければいけないが、a) を選んだらそこで物語は終わってしまうので、必然的にb) を選んで代償を支払う羽目になる。
6. 主人公は、失った大切なものを取り戻す旅をして、最後にそれを取り戻すと弱点も克服している
【ダブル選択肢式】
ステップ1:主人公が出会う危機をイメージ
ステップ2:その危機を脱出するために必要なものとは何かを考える
ステップ3:次に、今考えたものの【対極】を考える(知恵⇔無知、人間性⇔非情さなど)
ステップ4:その2つの要素を「具体的な行動」として表現する。これが「二択の選択肢」となる
ステップ5:大ピンチを迎えた主人公は、危機を脱出するために↑で考えた選択肢から正しい方を選択する
ステップ6:クライマックスで主人公が危機を脱するシーンを作る
ステップ7:クライマックスができる。次にオープニングを考える
ステップ8:できるだけ物語冒頭で、主人公に選択肢を選ばせる。この時、主人公は「クライマックス」でとる方とは逆の間違った選択肢を取る
「10のプロット・ツイスト」
物語の『敵』は『恐怖』の具現化であるべきとし、スティーヴン・キングはそれらの恐怖を三つに分類したうえで三匹のモンスターになぞらえた:
[重要な特徴:Aは『主人公に一切の非が無いのに敵が襲ってくる』、Bは『主人公に非はあるが無意識・主人公の制御の域を逸脱している・あるいは主人公に非はないが仲間に非がある』、Cは『100%主人公が悪い』] これらを『Xだと思ったらYだった』という文章のX、Yに組み合わせると、3*3で9つのパターンが出来る。 うち3つは「ドラキュラだと思ったらドラキュラだった」のように被りが発生するので、それらはまとめて「『敵』が死んだと思ったら生きていた」「『敵』の正体はAだと思っていたら実は別人物だった」の2つに統合される。 色々やると10つの『プロット・ツイスト(どんでん返し)』が発生する(個人的にフランケンシュタインが分かりにくいのでジャヴェルにする)A:主人公の外部からやって来た存在『ドラキュラ』(おそらく最もメジャーな『敵』)
B:主人公の内部に巣食う制御不能な存在『ジキルとハイド』あるいは『狼男』(『主人公の外部』はかなり広義に捉えていい。『仲間内』や『同じ機関の人』など)
C:主人公が行った悪事が生み出した存在『フランケンシュタインの怪物』(これも形あるものである必要性はまったくない。また、これの場合はどちらかというと主人公が悪で『恐怖』が正義のような形になる。この『恐怖』の行動理念は復讐、主人公の理念は『贖罪』が多い)
1.『敵』の正体はAだと思っていたら実は別人物だった
2.狼男が敵だと思っていたら、実はドラキュラだった
3.ジャヴェルが敵だと思っていたら、実はドラキュラだった
4.ドラキュラが敵だと思っていたら、実は狼男だった
5.ジャヴェルが敵だと思っていたら、実は狼男だった
6.ドラキュラが敵だと思っていたら、実はジャヴェルだった
7.狼男が敵だと思っていたら、実はジャヴェルだった
8.敵が死んだと思ったら実は生きていた
9.『目的』が死んだと思ったら実は生きていた
10.『目的』が見つからないとおもったら実はすぐそばにあった
【BS2】
長さは第一幕を1とすると、第二幕が2、第三幕が1.5
オープニングイメージ
↓
テーマの提示(これが物語全体を通してキャラクターに問いかけられていく)
↓
セットアップ(『壊される前の』舞台設定)
↓
着火、世界の破壊(きっかけ。カタリスト。誘因、動機、刺激)
↓
ディベート(悩みのとき、葛藤、脳内会議)
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ACT II(第二幕、非日常世界)への入り口
↓
【第二幕】
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サブプロット(B Story)
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ファン・アンド・ゲームズ(お楽しみの時)
↓
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【ミッド・ポイント】
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↓
悪いものたちが近づく、雲行きが怪しくなる
↓
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すべては失われた(どん底)
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↓
心の中の暗い夜
↓
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第三幕(ACT III, 融合世界)への入り口
↓【第三章】
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フィナーレ
ウラジミール・プロップの「童話・昔話の31の機能」
これに当てはめていくだけで、昔話や童話ができあがるという構造分析。翻訳すると意味伝達の精度が著しく下がるので、基本そのまま:
[第一領域:イントロダクション]
今後の展開のための舞台設定。メインキャラクターの状況説明はここで済ませる
- Absentation(absenceの古語みたいなもの): Someone goes missing
- Interdiction: Hero is warned
- Violation of interdiction
- Reconnaissance: Villain seeks something
- Delivery: The villain gains information
- Trickery: Villain attempts to deceive the victim
- Complicity: Unwitting helping of the enemy
[第2領域: ストーリーの大部分、メインストーリー]
メインストーリーがここからはじまる。敵の目的が明らかになり、主人公の目的が定まり、出発する- Villainy and lack: The need is identified
- Mediation: Hero discovers the lack
- Counteraction: Hero chooses positive action
- Departure: Hero leaves on the mission
※個人的Tips:「正義の味方」は「悪」の反作用的に生まれる存在なので、「悪」に明確かつ自発的な目的があるのに対し主人公側は「悪を潰すために動く」ある種受動的な存在である。
第3領域: [授与者と結果]
主人公は問題解決のために動き、道中で「授与者」から魔法の力・アイテムを得る。この領域で(見せかけであっても)一旦物語はまとまる・完結しているということを留意すべし。- Testing: Hero is challenged to prove heroic qualities
- Reaction: Hero responds to test
- Acquisition: Hero gains magical item
- Guidance: Hero reaches the destination
- Struggle: Hero and villain do battle
- Branding: Hero is branded
- Victory: Villain is defeated
- Resolution: Initial misfortune or lack is resolved
[第4領域:主人公の帰還]
この領域は「optional(非必須要件)」である。主人公は帰還し、平和な歓迎を望むが、だいたいの場合はそううまくはいかない。- Return: Hero sets out for home
- Pursuit: Hero is chased
- Rescue: pursuit ends
- Arrival: Hero arrives unrecognized
- Claim: False hero makes unfounded claims
- Task: Difficult task proposed to the hero
- Solution: Task is resolved
- Recognition: Hero is recognized
- Exposure: False hero is exposed
- Transfiguration: Hero is given a new appearance
- Punishment: Villain is punished
- Wedding: Hero marries and ascends the throne
七つの行動領域- 敵対者(加害者)
- 贈与者
- 助力者
- 王女(探し求められる者)とその父
- 派遣者(送り出す者)
- 主人公
- ニセ主人公
個人的には、第4領域が蛇足すぎる上に勇者の冒険劇にしか応用がきかないので有用性低し。
アンドレ・ブルトン(詩人)の遊び。「誰が」「どこで」「何をしていて」「何を言って」「何を言われて」「どうなったか」
Who is he/she: a dead man
Where is he/she: on the Leaning Tower of Pisa
What was he/she doing: sewing
What did he/she say: “What’s 3 times 3?”
What did the others say: “Remind yourself”
How did it go: ending up with 3 vs 0
骨組みとしては薄いが、手間がかからないので使い所はありそう。
【しりとり逆算】
「はじめ」と「おわり」の言葉を決め、間を埋めて合計10ワードつながるしりとりを作る。それを元に物語を作ってみる。。どちらかというとクンフー術。
例:初めを「ヘリコプター」、終わりを「麒麟」と決める
ヘリコプター→タンス→スミレ→煉瓦→硝子→スパルタ→たんぽぽ→ポルカ→カマキリ→麒麟
ここから物語を作っていく。……いや、無理だろ。誰かコメント欄で作って下さいこれで。
作中でやりたいシーンを列挙→因果関係を矢印で結ぶ→トポロジカルソート
ロダーリ法のシーン版みたいなやつ。「これやってみたかってん」を大量に作り、因果関係を結び、優先順位を決めて並び替える。
【用語】
・ツイスト
重要な伏線をサラっと言った直後、全く関係ない大きな事件を起こしてそちらに客の意識を集中させて伏線への注意を削ぐ(=隠す) 例:従業員との他愛のない会話(伏線)をしている最中、突如銃声が聞こえる
・梗概
1000~1500字程度のあらすじ。
・ログライン
一行程度のあらすじ。AがBしてCになる話、くらいの流れ。「クオリア距離」「誇張or縮小」「ずらし」などを用いるとうまくいく?
・マクガフィン
プロット・デバイスのひとつ。泥棒が狙う宝石や、スパイが狙う重要書類、7つのドラゴンボールなど、登場人物への動機づけや話をすすめるためのアイテム。
・statis=death(停滞死)
盛り上がるイベント(inciting incident)の前に発生する。読者が「主人公はもはや今までのやり方では(今まで通りには)生きられない」と気づく瞬間。BS2でいうと……どこだ?葛藤かと思ったけど、ズートピアでは「セットアップ」の最後だった。着火・破壊の前か。
・inciting moment(盛り上がるイベント)
読者をぐっと引き込むイベント。主人公がメインストーリーや非日常に押し込まれる瞬間。「着火・破壊」の周辺に置く。
・WHIFF OF DEATH(死の香り)
死の香りは、〈すべてを失って〉(構成のしっかりした脚本だったら75ページ目)のためのちょっとしたボーナスヒントみたいなもの。死の香りでは名前のとおり、具体的もしくは象徴的に何かが死ぬ。たとえば頼りにしていた師が亡くなるなど。
・ダークシークレット
真の黒幕が抱える野望、目的、計画。だいたいは終盤で明かされる。
・成長マシーン(Transformation Machine)
第二幕(ACT II)のこと。あなたのヒーローは「最初はどんな人間だったか」、そして「最後にはどんな人間であるか」を問いかけ、決める段階。毛虫が蝶に変身するためのトンネル。
・Save the cat moment
キャラクターの好感度を操作するための予防線のようなもの。かなり序盤(オープニングか、その直後くらい?)で置くべき。どんなに悪人の主人公であっても、「猫を救ったことがある」という情報をはじめに入れておけば嫌いになれない、というもの。
【考察】逆に、善人の主人公が過去に悪事を為していたら高感度は下がるだろうか?うーん、否っぽい。見た目の悪い人間が実はいいヤツだったりすると好感度がぐっと上がるという「ゲイン効果」が心理学ではある。
・ロス効果・ゲイン効果
ロス効果とは、知的そうな顔の人が、実は頭が悪いと、「知的そうでない人がそうであった時」と比べて好感度の落ち幅が大きいということ。
優しそうな人が実は優しくなかった、とかも同じ。「AがAでなかった」このAにポジティブな形容詞が入るならばロス効果、ネガティブならばゲイン効果となりむしろ上がる。
【クンフーの術、笊となるメソッド】
・梗概(1000~1500字程度のあらすじ)を書くと、物語の骨格が見えてくる。苦しんで書いたものを凝縮しなければならないので、ほとんどを捨てて骨だけを残さなければならない。物語の骨格がおもしろいかどうかがありありとバレてしまう。
・
【TIPS:禁忌やスパイス】
・起承転結の「承」が弱い・ない物語はつまらない
・「他人事」を「自分ごと」にしてやる 狭い穴を射抜く ネタツイみたいな感じ(??)
【ご都合主義について】
俺が読んだ本だと『偶然が2回も3回も重なるとそれは『奇跡』であり、ご都合主義となりリアリティが失われる』とあるが、俺の見解はちょっと違ってご都合主義という感覚は「回数」ではなく「偶然値の度合い」だと思う。「都合がいいが、まぁ起こりうるだろう」ということが何度発生してもさして気に障らないが、「このタイミングでこれが起きるのはあまりにも都合が良すぎる、確率が低すぎる」事だと、ただの一度の発生でも薄っぺらいストーリーに見えてくる。そもそもご都合主義とは「蓋然性或いは合理性を欠き、ただ物語進行上の必要から発生したとしか感じられない展開」のことで、避けるべきは「偶然」でなく「物語進行上の都合によって発生させられた」という感覚を与えてしまうことなのだ。
起こりえないことは起こりえず、起こりうることは起こりうるという前提の下、現実では事実それ自体が出来事の正当性となる。荒唐無稽であるか蓋然的であるかは問題ではない。それは現に存在することにより、承認されるための試練を通過したのである。(中略)
虚構では事情が異なる。虚構には現実と異なり、起こりうることと起こりえないことの制限が存在しない。(中略)その存在自体には何の証拠能力もない。それは承認されるための試験をまだ通過していないのである。それがあるということ或いはないということを人々に納得させるためには、証拠に代わるものを提示しなければならない。
Quoted from http://zatsubun624.blog49.fc2.com/blog-entry-320.html
また、俺が読んだ本だと「物語開始時の偶然」までも批判されていたが、俺はむしろ上記記事に記されていた一節のほうを支持したい。
物語はその開始時点に限り、荒唐無稽であることを許される。この「始まり」は、具体的には、物語の設定と物語開始時点での状況、そして物語の動き出すまでの序盤である。(中略)蓋然性や合理性をこの時点で考える必要はない。蓋然性や合理性が問題となるのは、始まりから派生する続きにおいてである。従って、物語の始まりから動き出すまでの間に限っては、創作者は自由に状況を設定してよい。
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