米津玄師stray-sheepレビュー
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機関銃にブッ殺されたくないので、今回は検索で飛ばれてくること想定でできるだけ公正に誠実に書いていこうと思います。
それでも一応言っておくと、そうとう拗らせているので手放しに称賛する感じにはならないと思われるので、彼を盲信していたい人は見ないように!まったく悪いことではない。
1.カムパネルラ ★★★
彼曰く「このアルバムの中で最も最近に作った曲」らしい。YANKEEのときもそうじゃなかった?1曲目は最新曲という独自ルールでもあるのかな。
曲評としては、タイトルが重すぎた。その一言に尽きる。言わずと知れた宮沢賢治の名作「銀河鉄道の夜」リファレンスだが、宮沢賢治信者としてはこの題名を背負うには相当のシロモノを持ってこないと認め難い。
扱いの叮寧さでいうとどうしてもsasakure.UK氏のカムパネルラの方に軍配が上がってしまう。というか、僕はカムパネルラと聴いたらそっちしか浮かばないので、どうしても彼の曲と比較してしまった。
そもそも、インタビューを読む限りだとあんまり銀河鉄道の夜と関係がないっぽいんですよね。彼がこのアルバムを出すまでの3年の間に死んでしまった人への墓標のような意味で書いたらしいので。
「月光蟲」と聞くとグリグリメガネの月光蟲が浮かびますが、古川さんとはまだ仲良くやってるんだろうか。最近完全に音沙汰がないが。
「カムパネルラ そこは豊かか」というフレーズはシンプルながらやるせない言霊がある。ここが一番スキだったかな。MVはかなり良かったと思います。「汚れた手」を金箔で表すのはうまい。
2.Flamingo ★★★★★
これは正直、文句なし。AメロとCメロの語尾すべて韻を踏むというどぎつい制約をかましながらも完璧な詞が書けている。
2曲目を務めるにはコレ以上ないナンバーだと思います。
3.感電 ★★★★
もともとは「犬のおまわりさん」モチーフだったらしい。MVは本人が「最高」と評していたが、まちがいないと思う。ちょっと言語化はし難いが、やりたいことがはっきり分かっていてよろしい。
「もう一丁漫画みたいな喧嘩しようよ」「愛し合うように喧嘩しようぜ」あたりはMAD HEAD LOVEを思い出してにやりとした。
今回のアルバムの中では一番テーマがハッキリしていると思う。「稲妻のように生きていたいだけ」。
4.PLACEBO ★★★
80年代っぽい感じのをやりたかったのだろうが、それにしてはやや近代的すぎる気も。
メロディ自体はかなり良いと思うけど、サビの歌詞がいくらなんでも空疎すぎるのでは。
プラシーボ効果がテーマなんでしょうから、内容としては妥当なのかもしれんが。Cメロの歌詞はかなりよい。
あとこれは曲に一切罪はないけど、最近ちょっと話題になった野田洋次郎の優生思想発言が自分は受け容れられなすぎていまコイツの声が聴こえること自体に若干ダメージを負った。
5.パプリカ ★★★☆
雅楽器みたいな笛が少しワンダーランドと羊の歌を彷彿とさせる。サウンドが濃密じゃないぶん、米津玄師の歌唱がクリアーに聴こえてよく映えている。彼特有のしゃくりというか、声が揺れる感じが好き。「見つけたのは」あたりとか。
とても良い曲なんですけど、アレンジはもっと良くなったんじゃないかという気がしている。打上花火の時もそうだけど、セルフカバーする時のアレンジがあんまり冴えないんだよな。曲自体がとても良い分、編曲がもっとそれを引き立てられたんじゃないかというのをおぼろげに感じた。
6.馬と鹿 ★★★☆
初聴では全然響かなかったんですけど、どうもスルメ曲っぽい。
サンタマリアとlemonを混ぜて熟成させた感じ。どっちかというとドラマでのオーケストラアレンジの印象が強い。
オーケストラアレンジだとものすごく映えるんですよね、サビのメロディが。あれが入ってくるとぞくぞくっとする。
7.優しい人 ★★★★★
今回の大当たりです。兎にも角にも歌詞がえげつない。
これは言葉を並べて評すると嫌な汚し方をしそうなので、よかった、とだけ言っておきます。
より正確に言うと、良かったのかもわからない。ただ、この曲を今の米津玄師がアルバムにブチ込んだ事実に敬意を表する。
8.Lemon
さすがに今更語ることはないでしょう。
9.まちがいさがし ★★★★★
菅田将暉版を聴いたことがなかったので今回が初聴だったんですけど、こんなに良い曲とは知らなかった。
サビのメロディが本当に美しい。今回のアルバムだとアレンジが一番完璧だったと思う。
後で菅田将暉版も聴いてみたんですけど、米津玄師の歌唱にいかほどのパワーがあるのかよく分かった。菅田さんも決して悪くないんだけど、米津歌唱の方がずっと訴えかけてくるものがある。
昔「自分の声が大嫌い」って言ってた人間とは思えないくらい自信に満ちた歌い声になりましたね。
10.ひまわり ★★★★★
賭けてもいいけど、これは絶対にBOOTLEGの頃に作ったけど都合上あぶれた曲。サウンドも歌詞もすべてがそう訴えかけている。爱丽丝や飛燕と若干被るから次回に回したんだと思います。シンセサイザーなんか完全に爱丽丝と同じヤツ使ってるしね。
ノリのいい系曲の中では久々に大当たり。なんと言ってもシャウトじみたサビの歌唱がカッコイイ。
こういうタイプの曲だと、歌詞の整合性みたいなのをあんまり考えなくていいから好きなだけ彼が好きな言葉を並べられて楽しそうですね。音に対してカチリと嵌る言葉を見つけさせたら彼は誰よりも強い。消し飛べェ!
11.迷える羊 ★★★
誰がなんと言おうが、俺は言うよ。これは平沢進インストールだ。
ただ別にパレードではないと思う。巷ではパレードと似てるだなんだでちょっと荒れたらしいけど。
前から言いたかったんですが、みんなって平沢進の曲「パレード」しか知らないんですか?世界タービンしか知らないんですか?もうちょっと聴こうぜぇ。
曲自体はすごく捻くれているのにテーマが割とブレイタントなので、正直言うことがない。「サンタマリアがいない」という歌詞だけちょっと気になった。いや、いろよ。居ないと困りますよ、あなたのコアでしょ。
演劇と聞いて一瞬Is that a motherfucking 演劇テレプシコーラ reference!?と思ったけど、多分そんなことはない。
サンタマリアとテレプシコーラのみならず、歌詞の所々に過去曲リファレンスっぽいのがあるような気がしないこともないですね。
12.Décolleté ★★★☆
今までの彼にはなかったタイプの曲だよね。
クロスフェードだと一番ビビッと来たヤツだったけど、アルバムで聴くとそこまででもなかった。
ひとつだけ言いたいのは、この感じは明らかに「シングルの3曲目用」のヤツで、アルバムに持ってくるタイプの客人ではないということ。
歌詞は多分なんかの小説のリファレンスだと思うんだけど、僕はちょっとわからない。
「名のついた昨日は くれてやるから静かな明日をよこせ」はちょっとウッと来た。米津玄師あるある:命令形の歌詞が飛んでくると刺さりがち。
13.TEENAGE RIOT ★★☆
アルカミラじゃねーか!
曲の性質上しょうがないんですけど、流石に中高生特攻すぎて射程外の自分には痛々しかった。
特に「カスみたいな」という部分。比喩だろうがなんだろうが、罵詈雑言として使われる単語が聴こえてくると癇に障る。あまり強い言葉を使うなよ、弱く見えるぞ……(藍染並感)
ギターの間奏はすごく好きです。なにかの上映前という感じでワクワクする。
14.海の幽霊 ★★★★★
このアルバムの中では一番完成度が高いと思う。彼はもうずっと前から「ジブリに憧れている」と言っていて、今回ついに久石譲っぽいサウンドの曲を作る機会に漕ぎ着けられたよう。
文句なし。変則的な超多重コーラスのミックスさえも完璧に楽曲にそぐっている。下手をすれば楽曲を台無しにし得る要素を、こういう貴重な機会にポンと投げられる思い切りが彼のいいところ。それで常に成功するのは、古川さんの言うところの超人的な運だろう。
一番好きなのが、2番サビ前の間奏。不気味だが美しい、海のうつくしさを完璧に表していると思います。海沿いに20年以上住んでいる俺が言うんだから間違いない。(何?)
15.カナリヤ ★★★★☆
はじめは「花束と水葬っぽい」って言ったんですけど、安藤裕子ののうぜんかつらっぽくもある。
曲自体はとても良い。かなりの難産だったらしいですね。それにふさわしい出来だと思います。
ただ一つだけ言いたいのは、インタビューだと「もともと『あなたじゃなくてもいいよ』って歌詞にする予定だったけど、直接的すぎるので『あなただからいいよ』に変えた。でも『あなたじゃなくてもいい』っていうニュアンスを込めた『あなただから』です」みたいな事を言っていて、さすがに無理があると思いました。真反対じゃないか。どうあがいても拾えないよ、そのニュアンスは。誰にも通じない秘め事は存在していないのと同じだって言ったのは2011年のあなたじゃなかったんですか。
とはいえ、やっぱり曲はすごく良いです。今までの鳳曲(抄本、KARMA CITY、Blue Jasmine、灰色と青)の中では一番好きかも。ドーナツホールは自分の中ではボーナストラックという扱いなので、YANKEEのエンディングはあくまでもKARMA CITYだと思っている。いや、でもKARMA CITY俺大好きだからな……。じゃあ同率くらいで。
クロスフェードで聴いた時は、ハチとしての自分との対話みたいな歌なんだと思ってました。サウンドが明らかに花束と水葬の頃に寄せているように感じたので。でも全体聴くとそうでもないかな。
悲しいもんで、「カナリアが消えてく五月の末」というフレーズでにやりとしてしまった。なぜかって?米津玄師は過去にも「五月の末」についての歌詞を書いているからです。眩暈電話に「焦げた瓶底 五月の終わり」という一節がある。「五月の終わり」なんてピンポイントな時期について二回も触れるアーティストなんている?
にしても、今回のアルバムは「人いきれ」というフレーズがやたら目立ちましたね。今まで使われたことのない言葉だったけど、気に入ったのかしら。まぁ作曲者側からの立場でいうと、「人混み」と言いたいのに5文字分の音しかない時とかに「人いきれ」を使えるのはかなりありがたい。世の殆どの曲って曲先詞後なので、良い歌詞を書くには縛られた文字数に適切な言葉をはめてやる語彙力が鍵になるんですよね。
総評:よかったです(小並感)
でもまだBOOTLEGの方が強いかな。もっと聴いていかんとなんとも言えんが。改めて見るとバラードがかなり多めですね。バラード主体でポップシーンでウケてるのは本当にすごいと思う。
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